― “買わない理由がなかった”時代の住宅ローン事情 ―
1980年代後半、不動産営業の最前線にいた私は、令和の住宅ローン相談を聞くたび、思わずため息が出る。
「あの頃は、“借りない方が損”って空気だったよな」
当時は、住宅金融公庫(いわゆる“公庫ローン”)があり、固定金利・長期返済・全期間据置。さらに銀行も競うように頭金ゼロ、民間併用でフルローン。営業の現場では、こんなフレーズが飛び交っていた。
「今買って、来年のボーナスから払えば大丈夫」
「どうせ地価は上がりますし、月々の支払いは家賃より安い」
まさに、“買わない理由がない”時代。
🖊「いつ買うか? 今でしょ!」は、実は昭和バブルの常套句だった
林修先生が令和に放ったあの名言――
「いつやるか? 今でしょ!」
この一言がCMで流れたとき、不動産業界の昭和人たちはこう思ったはずだ。
「あれ、俺たち30年前から言ってたやつじゃん」
実際、営業現場では毎日のように使われていた。
「この在庫、今動かないと次の号には載らないですよ」
「今月中に買えば、100万円引きで決裁できます」
「いつ買うのか? …今でしょ」
バブル営業は、**“説得”ではなく“勢い”**だった。
📋「審査」という名の儀式
今では考えられないが、当時の住宅ローン審査はほとんど形式的。
- 正社員 → 通る
- ボーナスあり → 評価UP
- 年齢35歳以下 → 歓迎
- 銀行担当者のノリがよければ家具代もローンに上乗せ
「審査落ちました」は、ほとんど聞いたことがない。
むしろ、「いくら借りられるか」が先で、「何を買うか」は後だった。
🏠頭金ゼロで、“夢”が買えた時代
- モデルルームで即日申込
- 公庫+民間のWローン
- 頭金ゼロ、ボーナス払いだけで支払い設計
- 「今買えば、来年には値上がりしてる」が常識
もはや営業マンが説明するより、時代の空気が後押ししていた。
📉今と比較すると…
| 比較項目 | バブル期(昭和末期) | 令和 |
| 審査難易度 | ほぼ通る(形式的) | 詳細な収支審査あり |
| 頭金 | ゼロOK | 今の時代もゼロOK |
| 提案内容 | 「今買えば得」 | 「将来のリスクまで含めて検討を」 |
| 借入スタンス | 借りて当然 | 借りる前に慎重な検討が必須 |
| 金利感覚 | 気にしない(上がらない) | 超低金利でも変動か固定かで悩む |
| メッセージ | 「買わなきゃ損」 | 「自己責任でどうぞ」 |
💬まとめ:「今でしょ」は、実は昔からあった
「今買わなきゃ損ですよ」
「来月になると、もう値上がりしますよ」
「この物件、すぐ他が動きますよ」
これらは、昭和・平成初期の分譲マンション営業で“日常語”だった。
つまり――
林先生の「今でしょ!」は、不動産営業においては1980年代からの“定番決め台詞”だったのだ。
🔚最後にひと言
令和では慎重な資金計画が尊ばれるが、
昭和バブルでは「地価が保証」してくれた。
それでも一つだけ言えるのは、
「本気で買いたい人には、“今”こそベストタイミングだと信じさせる」
― それが、営業マンの腕の見せどころだった。

