バブル期の不動産営業の光と影 ~1988年、新卒社員が見た驚愕の実態~

バブル経済が華やかに咲き乱れた1988年、日本の不動産業界は狂乱の時代を迎えていました。土地の価格は青天井、買えば必ず値上がりするという確信が市場を支配し、不動産営業マンたちはまさに「時代の寵児」となっていました。そんなバブルの最前線に、新卒として飛び込んだ私が目にしたのは、想像を絶する営業スタイルでした。

驚異的な営業成績を誇る上司の“秘策”

当時、私の上司だったA氏(仮名)は、飛ぶ鳥を落とす勢いで営業成績を上げ、役員の座にまであと一歩というところまで昇進していました。彼の成績が群を抜いていたのは、卓越した営業トークや市場の先読み能力によるものはもちろんのこと、まさかの「夜の営業術」でした。

彼は自ら「枕営業」と称し、富裕層の女性顧客たちと親密な関係を築くことで、次々と契約を成立させていたのです。曰く、「夜を共にすれば契約はもらったも同然」。彼の周囲では、次々と高級マンションや投資用物件が売れていき、社内では「色恋営業の達人」として一目置かれる存在になっていました。

成功の裏にある危うさ

当然ながら、そんな営業手法は倫理的にグレーゾーンどころか、ブラックに近いものでした。しかし、バブル経済の熱狂の中では、結果を出すことが何よりも求められました。A氏の成績が爆発的に伸びるにつれ、会社も彼の営業手法には暗黙の了解をしていたようでした。

ただ、バブルは永遠には続きません。市場が崩壊し、土地神話が崩れ去るとともに、A氏のやり方も次第に通用しなくなっていきました。顧客の資産が目減りし、投資の失敗で恨みを買うケースも出てきたのです。そして、ある日突然、彼は会社を去りました。噂によれば、取引先とのトラブルが原因だったとも、あるいは社内の派閥争いに敗れたとも言われています。

バブルの残像、そして今

バブル期の不動産営業は、まさに狂気と熱狂が入り混じる世界でした。A氏のような手法が横行していたのも、この時代ならではの現象だったのかもしれません。しかし、バブルが弾けた後の現実はあまりにも残酷でした。彼のように、時代の波に乗って急成長した者ほど、崩壊の波に飲み込まれるのも早かったのです。

30年以上経った今でも、バブル期の逸話は語り継がれています。しかし、A氏のような生き方が現代のビジネスシーンで通用するかといえば、答えは明らかでしょう。バブルの狂騒に踊らされた者たちの光と影を、私たちは忘れてはならないのかもしれません。

(※この物語は、実際にあった話をもとにしていますが、一部フィクションを交えております。)

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