バブル期の不動産営業のリアル——「行ってきます」と言って喫茶店へ

1988年、新卒で不動産業界に飛び込んだ私は、すぐにこの業界の“独特な”実態を知ることになった。バブル経済の真っ只中、不動産は「売れば売れる」「何をやっても儲かる」時代。そんな中で働く不動産営業マンたちの多くは、まさに自由気ままな日々を過ごしていた。

「行ってきます」と言って仕事せず

朝、出社すると上司や同僚が「行ってきます!」と元気よくオフィスを出ていく。新人だった私は、「営業活動ってこんなに外回りが多いのか」と感心していた。しかし、しばらくすると、誰も本当に仕事をしていないことに気づいた。

彼らはどこへ行くのか? その答えは簡単だった——喫茶店だ。

オフィスを出た営業マンたちは、行きつけの喫茶店に集まり、コーヒーを飲みながらスポーツ新聞を広げる。時には仲間と競馬やパチンコの話で盛り上がる。昼寝をする者もいる。とにかく「仕事」ではない時間を優雅に過ごしていた。

昼間は寝て、夜はバイト?

驚くことに、昼間の仕事をほとんどせず、夜間に別のバイトをしている営業マンもいた。昼間は外回りという名目でひたすら寝る。そして夜になるとクラブのボーイやガードマン、時には居酒屋の店員として働くのだ。

それでも営業の数字が立つのは、バブル経済のなせる技だった。不動産が飛ぶように売れ、適当にやっていても契約が取れる。お客様も「とにかく買えば値上がりする」と思っていたので、営業の努力など関係なかったのだ。

そんな営業スタイルでも成り立った時代

もちろん、すべての営業マンが怠けていたわけではない。真面目に働いていた人もいたし、トップ営業マンはしっかり稼いでいた。しかし、そうでなくても何とかなったのがこの時代だった。

バブルがはじけた後、多くの会社が倒産し、そんな営業スタイルは通用しなくなった。不動産業界は一変し、本当の実力が問われる時代へと突入した。

今振り返ると、あの時代は夢のようでもあり、異常でもあった。しかし、そんなバブル期の不動産営業を体験できたことは、ある意味貴重な経験だったのかもしれない。

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